第41章 奇行種の瞳が映したモノ
しかし、少しでも気を緩めたら感情のセーブができなくなってしまう。
クレアは光を失った瞳で、巨人に対する怒りや憎しみで心をいっぱいにすると、殺気溢れるオーラをまとい、巨人の侵入に目を光らせた。
ハンジもモブリットもそんな姿に胸を痛めるが、歯がゆいことに何もできなかった。
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クレアは拠点が完成するまでの間、一心不乱に巨人に向かっていき討伐をした。
それはフレイアとリリアンの命を奪った恨みを晴らすかのように…
それは弱い自分に対して怒り狂うかのように…
クレアは返り血を浴びながらほぼ1人で向かってくる巨人を掃討してしまった。
拠点の設営が完了し、埋葬が済み、帰還命令が出てもクレアは口を開こうとはしなかった。
突然の親友との別れに気持ちも感情もぐちゃぐちゃだ。巨人に対しての恨みや怒りで自身を奮い立たせておかないと、どんな弱音が流れでてくるか分からない。
特に大好きなハンジやモブリット、愛しいリヴァイの前で“甘え”がでてしまえば、抑えきれなくなった感情がどんな形で爆発してしまうか予想すらできなかったのだ。
そのためクレアはひたすらに前を向き、デイジーを走らせた。
「………………」
しかし、帰路でも信煙弾は何度も上がり、所々で黒の信煙弾も上がっている。
おそらく犠牲や怪我人も出て、帰還後も負傷兵の治療でしばらく1人にはなれないだろう。
クレアはより一層殺気で自身を奮い立たせると、トロスト区まで全速力でデイジーを走らせた。
トロスト区に到着すると、辺りはもうすっかり薄暗くなっていた。
本当にこれから先は、エルヴィンの言っていた通り、本格的に野営を視野に入れての壁外調査になりそうだ。
兵舎に着くと、クレアはモブリットにデイジーを任せると一目散に講堂へと走る。
やはり巨人との遭遇が多かったからだろうか、怪我人は多数だった。
幸い緊急手術が必要な兵士はいなかったため、医師と分担で治療にあたった。