第41章 奇行種の瞳が映したモノ
「嘘だろ…!?フレイア!!フレイアー!?」
エルドがフレイアの身体を抱き起こすが、生命の活動を止めてしまったその身体は、ヒヤリと冷たくて、ズシリと重く感じた。
これはベッドの中で愛を確かめ合っていた時に感じる温かくてフワリとする感覚とは全く違う。
今まで何人のも遺体の処理や埋葬をしてきたエルドだが、死んだ人間の身体がこんなにも重く感じるなんて初めてだった。
「ゔ……ゔ…フレイア…」
フレイアを抱きしめるとその場で泣き崩れてしまうエルド。
ミケも、リヴァイも、パドリックも、クレアも、誰一人としてエルドに声をかけてやる事ができなかった。
しかし、ここは壁外。
感傷に浸ってる暇もなく、遅れて到着した班から次々に治療要請が入った。
「兵長、ミケさん…ここは任せてもいいですか?」
光を失った蒼い瞳でクレアがユラリと立ち上がると、静かにその口を開いた。
「あぁ、分かった…」
リヴァイが返事をし、ミケも頷くと、クレアはすぐに怪我人の治療に向かう。
エルドにも、クレアにも、かける言葉が見付からなかったリヴァイは、心の中で盛大な舌打ちをした。
全ての班の応急処置が終わると、リヴァイ達と一緒にいたハンジらと合流し、クレアは急いでガスと刃を補充しに行った。
ここの拠点では、フレイアを合わせて4名の兵士が命を落としたが、巨人に食われてしまった人数を入れれば犠牲者はもっとだ。
遺体は拠点の設営が終わり次第、土に埋めて埋葬されることになった。
「……クレア、大丈夫?!」
遅れてきた兵士の治療が終わった後にハンジ達と合流したのだが、感情を押し殺したような冷たい表情で何も話そうとしないクレア。
そんなクレアに心配したハンジは、さっきから何度も同じ質問を繰り返す。
「ですから、大丈夫です。今はそんな事よりまわりに目を光らせて下さい。拠点設営中に巨人を侵入させる訳にはいかないんですから!!」
「クレア…」
今は巨人討伐担当が四方八方に散り、巨人の侵入を防いでる最中だ。
本当は親友の死を嘆き、自身の無力さを嘆き、感情のままに泣き叫びたかったが、兵士という立場が何とかそれを阻止していた。