第41章 奇行種の瞳が映したモノ
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「フレイア!!フレイア!!お願い!目をあけて!!」
「クレア…」
必死に大声で叫ぶが瞼が微かに震えるだけで開かない。そして、ミケがその力の限りで圧迫している部位もどんどん血で滲んでいく。
血に染まる布
弱まる呼吸
「フレイアー!!」
クレアが胸に耳を当てるが、鼓動が確認できない。
止まってしまったのだろうか。
「う…そ…でしょ……」
ギリリと奥歯を噛みしめる。
クレアは再び強心剤を投与し、フレイアの胸元に手を当てると、心肺蘇生術に入った。
通常の3倍量の強心剤、心肺蘇生、これで駄目なら本当に諦めなければならない。
そんなの嫌だ…
「フレイア!!お願いよ!!目を開けて!!あなただってエルドさんに会いたいでしょ?!」
エルドがくるまでは、諦めたくない。
胸部を一定のリズムで圧迫をし、呼吸を確認する。
かろうじて自発呼吸ができているが、それももう、消えてしまいそうな程に弱い。
胸部の圧迫をして…
呼吸の確認…
「はぁ…はぁ…はぁ……」
もう何度繰り返しただろうか…
さすがのクレアも息を上げるが、その手を止める訳にはいかない。
だが……
「あ……あぁ……」
遂には呼吸も止まってしまった。
呼吸も止まってしまったなら今度は人口呼吸とセットだ。クレアは迷う事なくフレイアの口から息を吹き込むと再び胸部の圧迫をおこなう。
しかし、何度繰り返してもフレイアの心臓も呼吸も戻らなかった。
諦めたくないよ…諦めたくないよ…諦めたくない!!
「いやぁぁぁぁぁ!!フレイアーーーー!!!」
ードンッ!!!ー
クレアは両手を組み頭の上まで振り上げると、感情のままにその両拳をフレイアの胸に振り下ろした。
その力任せに拳を振り下ろされたフレイアは、衝撃のあまりビクンと身体がしなってしまう。
だが次の瞬間……
「ガハッ……ハッ……ハッ……」
むせるような咳き込みと同時にフレイアの目が薄っすらと開いた。