第41章 奇行種の瞳が映したモノ
「はぁ……はぁ……」
エルドを探しに走り出した兵士の名はパドリック・ターナー。クレアよりも年上のベテラン兵士だ。
パドリックはフレイアとリリアンがクレアと仲が良かった事も、エルドと恋仲であった事も知っていた。
それ故、クレアの言ってる意味がどういう事なのか理解できてしまい、唇を噛みながらひたすらに走ってエルドの姿を探した。間に合わなかったら自分の責任だ。そう考えれば考えるほど思考は乱れ息が上がってしまう。
「落ち着け!!落ち着いて考えろ!」
パドリックは一旦立ち止まり目を閉じて深呼吸をする。
エルドはリヴァイ班。
この古城跡に到着後はミケ班と同様巨人の討伐担当になっている。
到着していれば、今頃はガスと刃を補充しているはずだ。
「急げ!!」
パドリックは大きく息を吸うと、補充場所になっている所まで再び全速力で走りだした。
目的の場所が見えてくると、リヴァイ班らしき兵士達がガスと刃を補充していた。
やはりここで間違いなかった。
パドリックは走るスピードを落とさずに大声で叫ぶ。
「エ…エルド!!エルドー!!」
その声に気付いたエルドはすぐに顔を上げパドリックの方を見た。
「パドリックか?いったいどうしたんだ?」
「一緒に来てくれ!!」
「は?!どこにだよ?」
「とにかく早く一緒に来てくれ!フレイアが…重症だ……!!」
「なん…だって……」
その瞬間、リヴァイを含むそこにいた全員が凍りついた。
「今クレアが必死に処置をしている!だから急げ!」
少しくらい言葉を選んでやりたかったが、間に合わなかったら取り返しがつかない。
今は1秒でも早くエルドをフレイアの元に連れて行くのが最優先事項だったが、エルドは動揺しているのか動こうとしない。
お願いだ!急いでくれ!
パドリックがエルドの腕を無理矢理引っ張ろうと思ったその時だった。
「おい!エルド!パドリックの言ってることが聞こえなかったのか?!急げ!!」
「へ、兵長!!」
まさかのリヴァイが声を上げてエルドを我に返した。