第41章 奇行種の瞳が映したモノ
ミケはハンジと同様分隊長という階級のベテラン兵士だ。討伐力もリヴァイに次ぐ実力を持っている。
そんなミケが自身の顔を見ながら少し取り乱した表情で呼んでいる…
それは自分にとって何か悪いことが起きていると簡単に想像できる。
「………」
「クレア!!」
完全に思考がストップしてしまったクレアに、ミケが再び名前を呼んだ。
「あ……あ…」
その声でなんとか我にかえるクレア。
しかし、自身の瞳に映った光景は余りにも残酷なものだった。
危機迫る表情で“誰か”を抱えているミケの腹部は真っ赤な血に染まっている。
もちろん、この血はミケのものではないのは明白だ。
「……嘘…でしょ…フレイ…ア……」
そう、抱えられていたのは、変わり果てた姿のフレイアだった。
シートの上に横にさせられたフレイアは右脚を太腿の付け根から巨人によって食いちぎられており、失血死していてもおかしくない状態だった。
ミケ班の班員が全員でクレアの元まで駆けつけたようだが、ゾクリとさせられる程の違和感を感じ、クレアは震える声で問いかける。
「フ、フレイアはいったいどうしたんですか?それにリリアンの姿が見られないのですが…もう拠点の設営に向かったのでしょうか…?」
クレアの問いかけに班員はみな目を背ける。
それだけで、全てを悟れてしまうのが壁外だ。
「…リリアンはここに向かう途中、索敵もれの巨人の討伐に入った際に食われてしまった…フレイアの怪我も…同様だ。」
悔しそうにミケが事実だけをクレアに告げる。
「そ、そんな…」
受け入れ難い事実に取り乱したくなるが、そんな事をしている暇など今はない。
クレアは動揺している頭の中を必死に叱咤する。
考えろ…!
考えろ…!
考えろ!
今自分がすべき事、しなくてはならない事を考えろ!!
ーバチンッー
クレアは嘆き喚きたくなる弱い自分を振り払うが如くかぶりを振ると、自身の手で思い切り頬を叩いた。
…動け!私の脚!
…動け!私の手!
…動かせ!私の頭!
…叫べ!私の口!
そしてクレアは腹の底から叫んだ。