第41章 奇行種の瞳が映したモノ
「あ!リリアン!」
突然の救世主にホッしたクレアは今アンドレとたてがみの編み込みをしている事を説明してやった。
「そうなんですか?実は私も時間を持て余してしまっていて……」
「そ、それならリリアンも一緒にやらない?そんなに難しくないよ。」
「い、いいんですか?そしたら私もベルナを連れてきます!」
リリアンの登場によって、なんとか窮地を抜け出せたクレア。
手に汗握りながらリリアンにも、編み込みのやり方を説明すると、次々に凛々しい姿に変身した愛馬が出来上がった。
3頭とも満足そうに頸を上下に振っている。
身体にブラシをかけて艶々にしてやれば、壁外調査などではなく、今すぐにでも貴族の馬車を引けそうだ。
「2人とも上手だったよ。スコールもベルナもカッコよくなって満足そう。」
「ありがとうございますクレアさん。なんか、黙々と没頭してたら時間がすぎるのあっという間でした。」
「私もです。なんか明日の壁外調査に気合が入った様な気分になりました。」
「本当に?!それなら良かった!」
アンドレとリリアンに、初陣の時の様な不安定な表情は見られなかった。
それは、自分自身の弱い部分にきちんと向き合って乗り越えてきた証拠と言ってもいいだろう。
それ程までに2人は調査兵として大きく成長したに違いない。
どうか勇敢に戦って無事に帰還をして欲しい。
2人を見つめながら思わず胸を熱くさせたが、その時だった。
「おい、お前ら、何してるんだ?!」
「「リ、リヴァイ兵長?!!」」
いきなり現れたリヴァイにアンドレとリリアンが驚いて声を上げた。
アンドレは思わずイヤな予感が頭をよぎり、背筋を凍らせた。きっとクレアと一緒にいた事を面白く思ってない筈だ。
「兵長、会議は終わったんですか?私達、ちょっと時間を持て余してしまっていて…3人で愛馬のたてがみを編み込みしていたんです。」
「そうかよ…」
並んだ馬の様子を横目で見ると、リヴァイは小さく答えた。
もしかしなくてもこの状況が気に入らないのだろう。
リヴァイの眉間のシワは深いまんまだ。