第40章 エルヴィン・スミスの表と裏
「あ、あの資金は……民の税金と、貴族の方の寄付に、ハンジさんが作る発明品の売上金だと思っていたのですが……」
税金に、寄付に、発明品の売上。
確かに間違いではない。
ほとんどの兵士がそう思っているだろう。
「あぁ、正解だ。だが、税金の殆どは憲兵や王都、駐屯兵団に持っていかれているのが現状だ。それに、税金の無駄遣いや、わざわざ壁外に人数を減らしに行っていると言われている我々に寄付をしてくれる酔狂な貴族はそこまで多くはない。」
「では…運営資金の大部分はハンジさんの発明品にかかってるという事ですか?」
税収や高所得者の寄付等の一定の収益が見込めないという状況は非常に危険だ。
ハンジの頭脳を疑っている訳ではないが、現時点でハンジ班の班員はクレアとモブリットしかいないのだ。
たった3人で兵団の資金を支えなければならない状態など、危険極まりない。
しかし、エルヴィンの返答はクレアの考えている事とはまったく違った。
「確かに、ハンジの発明品の売上は兵団の活動資金になくてはならないものだ。だが、それだけでは不十分。税収の割合は毎度会議で主張をしてるが、一向に改善されない。……となると、残る1つは……」
「資金を援助してくださる、貴族の方……ですか?」
「そうだ……」
しかし、それはたった今そこまで多くはないと言っていた気がするが……
クレアの頭は疑問符だらけだった。
「ですが団長……それはそこまで多くはないと……」
「あぁ、だが例外もあるんだ。」
「え?!」
「こんな方法を使えば……な。」
エルヴィンはジャケットを脱ぎながら立ち上がると、
クレアの座るソファの隣に腰掛けて自分のシャツのボタンを外し始めた。
「え?!団長?!」
自分の目の前で服を脱ぎだしたエルヴィンに
クレアは驚き思わず声を上げてしまった。
しかしよく見ると、シャツのボタンが外れてはだけたエルヴィンの逞しい胸板には無数の赤い跡が付けられていた。
これは……クレアもよく知っているものだ。