第40章 エルヴィン・スミスの表と裏
爽やかな笑顔を向けてはくれたが、やはり少し疲労感が伺える。
こんなエルヴィンを見るのはもしかすると初めてかもしれない。
「団長…本当にお身体は大丈夫ですか?内地でのお仕事もたてこんでいたのでしょうか…?失礼を承知で申し上げますが……あまり顔色が優れない様に思えてなりません……」
すると、エルヴィンは少し困ったようにクレアを見つめると、小さくため息をついた。
「クレアには敵わないな…。正直に白状すると、少し…というかだいぶ疲れている。」
正直に白状をしても爽やかな笑顔を崩そうしない。
そんな姿にさらにクレアは心配をしてしまう。
「団長……」
「3週間後に次の壁外調査が決まった。今回は、前回達成できなかった古城跡の拠点を何がなんでも完成させなければならない。」
「…………………。」
「それと、同時にその古城跡から先のルートはもう日帰りで帰ってこれる距離ではなくなる。」
「ということは……」
「そうだ。今回の古城跡の拠点が完成したら、その次からは夜営をしての壁外調査になっていく。」
「夜営……確かにルートがのびているので、このままですと、日没までに戻るのは難しくなりそうですね……」
夜営になれば今まで以上に人員が不可欠になる上に、食料や医療道具はもちろん、運ぶも物も多くなる。
用意するものに考えなければならない事、決めなければならない事に問題は山積みだ。
「夜営を伴う壁外調査となれば、自然と必要な資金も倍増となる…」
「資金……」
「クレア……君はこの調査兵団が、どんな資金の元に成り立っているのか、どこまで知っているかな?」
「資金の元…ですか?」
「そうだ。」
こんな話、クレアにはするつもりはなかったが、今夜のエルヴィンは本当に疲れていたのだろう。
クレアはなんて思うだろうか……
胸の中に不穏な空気が流れるが、もう後戻りはできない。エルヴィンはクレアが答えるのを静かに見つめながら待った。