第39章 嗚呼、我が愛しき分隊長
「クレア、とても素晴らしい計画なのだが、パーティーに出す料理とはいったいどんなものなんだ?聞かせてもらってもいいか?」
エルヴィンは昨年の巨人の模型の事がトラウマになっているのだろう。決してまずい訳ではなかったが、巨人を食べるなど、できれば勘弁して欲しい。もし今年も同じ展開になるのであれば、今ここでなんとか軌道修正をしたかった。
「やはりハンジさんといえば巨人です!!」
鼻息荒く力説するクレアにエルヴィンは少し身構える。
「ですが、昨年兵長から別のものも作ってくれと言われてしまったので……巨人の模型は一体にするつもりです。なので、オードブルになるような物を何品か作ろうと思っています。」
それを聞いて、すこし全身の緊張が抜けていったエルヴィン。今年は巨人の模型を無理矢理食べさせられる事はなさそうだ。
「そうか。それと、ハンジの部屋でやると言っていたが…大丈夫なのか?リヴァイなんかは反対するかもしれないぞ。」
そう、次に心配したのはハンジの部屋の問題だ。
ハンジの自室は散らかっている……なんて言葉ではぬるすぎる表現で、荒れている…空き巣が入ったか…と言いたくなるような状態だ。
それは、ハンジの部屋に入った事のない者でもひと目でハンジの部屋だと判断できる程だ。
そんな部屋でリヴァイを含む招待客が気持ちよく飲食できるなど、到底思えない。
しかし、その点に関してもクレアは“任せてください”と言いたげな表情で自信満々に話しだした。
「その点に関してはモブリットさんの協力のもと、皆様のご心配は無用になる様手配済みです。ご安心下さい!!」
「そうか……」
そこまで言うのであるなら大丈夫なのだろう。
エルヴィンはひとまず安心をすると、ソファから立ち上がり、机の引き出しをあけた。
「クレア、料理を作ると言っていたな。これは材料の足しにしなさい。」
そう言うと、エルヴィンは財布から何枚かの紙幣をクレアに差し出した。