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ハンジ班の奇行種【進撃の巨人/リヴァイ】

第38章 “キミ”という存在





正直な気持ちとして、タリアは嬉しかった。

叶わぬ想いを抱えて来る客が多いこの娼館で長く働いていたが、そんな事を言われるのは初めてだった。

思わず胸が熱くなるが、この気持ちの正体が何なのかタリアには分からなかった。


お互いがお互いに抱く想いの正体が分からぬままただ見つめ合う。














「そんな…謝らないで。私は嬉しかったから、そんな理由なんてどうでもいいわ。」



「ありがとう…その…また来てもいいか?」



「勿論よ!私の指名はいつでもガラ空きだからね!大歓迎よ。」


タリアはいつものようにいたずらっぽくウインクをして見せた。



モブリットは裏の出口から見送られると兵舎に向かって歩き出す。

一度だけ振り向くと、タリアは変わらぬ笑顔でずっと手を振ってくれていた。









「………………はぁ。」



溜まったモノを吐き出してきたにも関わらず、モブリットの頭の中は何故だかタリアの事でいっぱいだった。


ハンジと重ねることができなくなっても、モブリットはタリアに対して激しく欲情することができた。

それに、最後にタリアが言った言葉も無性に胸に引っかかる。



──私の指名はいつでもガラ空き──



確かにタリアは年齢が上がり、客引きなどの仕事がメインになってはいるが、自分のように強く希望する男が店にくれば、もちろんだが拒んだりはしないだろう。

それが娼婦という仕事だ。

だが、そんな状況を考えると胸の中がモヤモヤとするのはどうしてか……

自分はタリアの事を1人の女として見てしまってるのだろうか……


ここ数年、ハンジの事しか頭になかったモブリットにはなんとも難しい問題だった。






ため息を付きながら空を見上げれば、今宵の夜空は雲ひとつない満天の星。


漆黒の夜空に輝く星は、光を浴びることのない娼館の娼婦として働くタリアによく似ているな…などとボンヤリとモブリットは心の中で呟いた。


よく眺めれば月も高く昇っている。もう時刻はだいぶ遅いだろう。


明日も訓練を控えていたモブリットは寝不足にならぬ様足早に兵舎へと戻っていった。





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