第38章 “キミ”という存在
そしてタリアの事を知れば知るほどハンジとタリアはかけ離れていく。
もうどんなにそっくりでも2人を重ね合わせることは出来なくなってしまった。
だが、まったくの別人となってしまってもモブリットはタリアを拒絶することはなかった。
むしろ反対だ。
まったくの別人となってしまったタリアだが、自分の身を案じ、素直に無事を喜んでくれる姿に少なからずモブリットは胸を締め付けられた。
この感情の正体が何なのか今はわからない。
しかし、そんなタリアの姿が堪らなく可愛らしく感じてしまったのは言うまでもないだろう。
気付けば自分の身体は真っ直ぐにタリアを求めて熱くなっていた。
「モブリット……??大丈夫……?」
黙ったまま自分に覆いかぶさり微動だにしなくなったモブリットにタリアは心配そうに声をかけた。
「あ、あぁ……すまない……大丈夫だ。」
少し微笑みながら答えるモブリットはいつもの優しいモブリットだ。
タリアは急いでシャワーの支度をすると、汗を流すためにモブリットをシャワー室まで案内をした。
シャワー室でのサービスが済み、着替えれば、もうお別れの時間だ。
聞いてはいけないと分かってはいるが、次いつ会えるかなんて分からないのだ。
下手をすれば次の壁外調査で命を落としてしまうかもしれない。そう思うと聞かずにはいられなかった。
「モブリット……こんなこと、聞いてはいけないことだと思うんだけど……」
「…!?」
「どうして今日は私の名前を呼んで抱いてくれたの??」
言った瞬間にタリアは後悔した。
これではまるで“君が好きだから”などという答えを欲しがっている様に聞こえてしまうではないか。
よく見ればモブリットの表情もかたい様に感じる。
完全に失言をしてしまったか……
そう思った時だった。
「今日はいきなりすまなかった……自分でもよく分からないんだが、君のことを知ったら、どうしても君のことを抱きたくなったんだ……迷惑…だったかな……」
ポリポリと頭を掻きながら答えるモブリット。
──君のことを抱きたくなったんだ──
そんな事を言われたのは初めてだったタリアは顔を熱く上気させ、少し俯いてしまった。