第37章 今生きて、此処にいる
「兵長、それって…」
「あぁ?!なんか文句あるのか?いなやら今すぐにでもエルヴィンに報告して開拓地送りにしてやっても構わんぞ。」
「いいえ!!文句だなんて…とんでもございません!誠心誠意務めさせて頂きます。」
「分かったならいい。今日と明日はゆっくり休め。休み明けの班編成は追って伝える。まだ班長が決まってないからな、実家に帰省するなら俺に報告を入れてから行けよ。」
「は、はい!!承知致しました!」
アンドレは敬礼をすると、執務室から出ていった。
リヴァイはアンドレの躾直しが上手くいき、ひとまず安堵した様だ。
少し口角を上げ机に戻ろうとすると、リヴァイの身体をフワッとキンモクセイの香りが包み込んだ。
「!?」
「兵長……ありがとうございます……」
キンモクセイの香りの正体はクレア。
クレアがリヴァイに抱きついていたのだ。
「……いったいなんの礼だ?」
「アンドレの事です。私はもっと怖い事を想像していましたので…」
「なんだよ。俺はそこまで冷徹ではないぞ。」
「そうですよね……兵長の優しさに感謝致します。」
自分と将来性のある若い兵士のためにに寛大な処分で事を収めたリヴァイにクレアは改めて深い感謝の気持ちを伝えた。
自然と抱きつく腕の力も強くなる。
だがこんなに積極的に触れられると黙っていられないのは男の性だろうか。
「おい、そんなに無防備に抱きつかれたらヤリたくなるだろうが……」
クレアの顎を掴み視線を合わせるように上を向かせると、その顔はたちどころに赤くなり、グイッと距離を取られてしまった。
「し、失礼しました!!兵長!さぁ、お仕事しましょう!!たまりにたまって山積みです!」
「俺は別のモノが溜まっている……」
「そ、そういう事は後です、きっとまだまだ仕事は増えますので、手分けして終わらせてしまいましょう。」
クレアは赤くなった頬をパンパンと叩くと、書類の山をソファのテーブルにドンと置き、心臓をドキドキと高鳴らせたまま仕事を始めた。