第2章 残酷なきっかけ
気がつくと、クレアは避難所らしき場所の簡易布団の上に座っていた。
暗くはないため時刻は昼頃であろうか。
状況が飲み込めずキョロキョロしていると、一人の女兵士に声をかけられた。
「あれ?あなた、意識戻った?」
言っている意味がわからなかったが、とりあえずうなずいた。
「よかったわ。あなた、ここにきて座りこんだかと思ったら座ったまま動かなくなってしまったの。心配したのよ。ここまできたことの記憶はあるかしら?」
内門が見えてきたあたりまでは覚えていたが、そこから今に至るまでの記憶がまったくなかった。
女兵士の話によるとこうだ。
昨日の昼過ぎに謎の大型巨人と鎧のような巨人がシガンシナ区の壁と内門を破壊して、ウォールマリア内に巨人が侵入してしまった。
幼い少女を抱えたクレアは運良く内門が破壊され、巨人が流れ込む前にトロスト区の避難所に逃げ込めたらしい。
少女を駐屯兵の兵士に託したあとは避難所の壁に背中を預けて座り込んだまま意識を失ってしまった。
「目もあいてるし、まばたきもしてるのにこちらの呼びかけに反応してくれないから心配したわ。傷の手当はしてあるけど、何かあったら声かけてね。」
そう言われて足元をみると何度も転んだであろう両足には包帯がまかれて血が滲んでいた。
クレアは左手に抱えられたかごを兵士に差し出し「配給のたしにしてください」と言うと、布団に横になり目を閉じた。
これからの事は1度眠ってから考えたかった。
色々な事が起こりすぎて心も身体も疲弊していた。
足元がズキズキと傷んだが疲弊しきった身体はすぐに眠ることができた。