第37章 今生きて、此処にいる
そんな他愛もない事を話してる時だった。
──コンコン──
リヴァイの執務室の扉から遠慮がちなノックが聞こえた。今日と明日は特別休暇だ。
用事があるなら幹部の誰かだろう。
ノックをしてくるあたり、いつも派手に登場してくるハンジではなさそうだ。
「兵長…失礼します。アンドレ・シュナイダーです。」
しかし、ノックをしたのはまさかのアンドレだった。
リヴァイはクレアの様子を伺ったが、少し表情は緊張しているものの、“どうぞ通して下さい”と目配せをされたため、入室の許可をした。
「入れ。」
アンドレは少し俯きながら入室してきた。
休みにも関わらず兵服を着ている。
この様子からすると、昨夜の事を話しにきたのだろうか。
「なんの用だ?」
リヴァイはワザと書類に目を通したまま冷たく声をかける。
するとアンドレは勢いよく腰を曲げると深々と頭を下げ、昨夜の事を謝罪し始めた。
「リヴァイ兵長には命を助けて頂き、クレアさんには壁外調査前のサポートを親切にして頂いたにも関わらず、自暴自棄になりとても許されない行動をしてしまったことを、大変後悔しております。」
「ア、アンドレ……」
「兵長の昨夜のお言葉で目が覚めました。自分には守りたい家族がおります。仲間の死を無駄にもしたくありません!ですので心を入れ替えて、また休み明けから訓練に励みたいと思っております。寛大なる処置、感謝してもしきれません……ありがとうございました!」
そこまで言うと、ドンと拳を胸にあて敬礼をしてみせた。
そして、クレアと目が合うと目の前まで歩み寄り、再び深々と頭を下げた。
「クレアさん!あんな乱暴な真似、本当にすみませんでした!もう、二度としないと誓います。」
「アンドレ…」
正気に立ち直ってくれたのなら、それで十分だ。
クレアは少し震える手を必死で押さえながらアンドレの肩に手を置くと、そっと顔を覗き込んだ。