第37章 今生きて、此処にいる
「へ、兵長??」
不安げにリヴァイの顔色を伺うが、怒ってはいなさそうだ。
「ひとまず気は済んだ。無理な話かもしれないが、今日あったことは忘れろ……」
「は、はい……」
1度ではなく2度も男から襲われる酷な経験をしてしまったのだ。忘れるなんて無理な話だろう。
でもリヴァイは自分といることでなんとか忘れさせてやりたかった。
「お前が望むなら今すぐにでも記憶の上書きをしてやるが……」
「いけません!兵長!今夜はもう休まれて下さい!」
すかさずドクターストップが入ってしまった。
「なんだよ。厳しいこと言うなよ。」
「当たり前です。兵長…傷口は痛みませんか?」
「あぁ…点滴のおかげで痛くはない。」
「薬が切れたらまた痛みだすかもしれないので、明け方に目が覚めたら起こしてくださいね。」
「あぁ、わかった。」
せっかく自室まで連れてきたのにと少し残念な気持ちにもなったが、クレアも色々あって疲れが出ているしもう真夜中だ。
無茶をさせるのはやめておこうと、リヴァイは薄い布団をかけてやると、2人で静かに眠りについた。
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翌朝
アンドレは開けっ放しだったカーテンから差し込む朝日で目を覚ました。
今日と明日は壁外調査後のため特別休暇だ。
急いで準備をする必要はないが、ぐっすりと深く眠っていたからだろうか。
すっと身体を起こせそうな気がしてそのままベッドに手を付き身体を起こす。
「………………っ!」
身体は問題なかったが、顔に鈍痛が走り思わず顔をしかめてしまった。
痛みと共に思い出すのは昨夜の事。
そして朝日が差し込む窓辺を見ると、温かな光が全身に浸透し寝起きの頭がどんどんと冴えていくのを感じた。
ふとベッドのサイドテーブルに目をやると、昨夜クレアが持ってた薬がそのまま置かれている。
薬がなくても眠れた。
そう思うといてもたってもいられなくなり、アンドレは急いで兵服を用意するが、身体は汗と拭き取りきれなかった血液でベトベトだ。
まずは風呂に行かなければと、用意をするとアンドレは全速力で大浴場まで走った。