第37章 今生きて、此処にいる
愛しい恋人の好意を裏切り、乱暴をした新兵等即退団させてやりたい気持ちと、愛しい恋人の慈悲深い想いを通してやりたい気持ちとが複雑にぶつかり、リヴァイもその場から動けなくなってしまった。
「…………」
「…………」
「…………」
リヴァイは自身の中の葛藤をどうにかしようと、思わず押し黙ってしまうと、アンドレの部屋は静寂に包まれ、その室内はアンドレの息を上げた呼吸音と、クレアのしゃくりあげる泣き声だけが響いた。
「クレア……大丈夫か?」
リヴァイはアンドレから脚をどかし、ひとまずベッドの上にいるクレアに駆け寄ると、ケガをしていないか確認をした。
「は、はい……」
シャツのボタンをとめてやりたくてもボタンごと引きちぎられてしまっていて、胸元を隠してやることができない。
無理やり剥ぎ取られたと思われるブラジャーも破れてしまっていて、着用するのは無理そうだ。
「これを着てろ…」
リヴァイは自分が着ていたジャケットを脱いでクレアの肩にかけてやった。
少し大きめのジャケットならなんとか隠れるだろう。
「す、すみません……」
「お前が謝ることはない…」
親指で頬を伝う涙を拭ってやり、目元をペロリと舐めると、ため息をつきながらリヴァイはアンドレの方を向いた。
「ひっ……」
リヴァイが大きなため息をついて床に尻をついているアンドレをひと睨みすると、なんとも情けない男の悲鳴が上がった。
そんなのに構うことなくリヴァイはつかつかとアンドレ方に向かうとドンッと腹に片脚を乗せ、再び胸ぐらを掴んだ。
「おいアンドレ……開拓地に行きたくなきゃよく考えろ。」
「…………うぅ!!」
リヴァイは自分よりも小柄な体格だというのに、締め上げる力は想像を絶するモノだった。
どこにそんな力が……
無意識にうめき声が漏れる。