第37章 今生きて、此処にいる
帰還後、リヴァイは一通りの片付けを終えると、執務室にきていた。
今回は新兵を中心に犠牲をだした上に作戦は失敗だった。遺族への弔問や、資金援助のよびかけ、内地への報告、他にも幹部のやる事は今から山積みだ。
「はぁ……」
椅子に腰掛けるが、仕事を始める前にクレアの淹れる紅茶が飲みたい。
そう思うとなかなか集中できなかった。
今頃クレアは負傷兵の治療にあたっているだろう。
リヴァイは諦め自分で淹れようと立ち上がったが、その瞬間、グラリと視界が歪んだ。
「……………っ!」
それと同時に軽い吐き気がこみ上げてきてしまい、リヴァイはそのままストンと椅子に逆戻りしてしまった。
「…………チッ、傷のせいか…」
リヴァイはあの時、周りの負傷兵の数手前にクレアの処置を断ったが、出血の多い傷を負ってる事は十分に自覚していた。
処置を頼みたくてもフラついている所を見られてクレアに余計な心配をかける訳にはいかない。
リヴァイはゆっくりと立ち上がると、まだ若干痛むこめかみを押さえながらソファまで行き、もたれるように腰かけた。
少し休めば目眩も収まるだろう。
そう思い目を閉じた時だった。
──コンコン──
「兵長いらっしゃいますか?クレアです!」
「!?」
想いが届いたかの様にクレアはやってきた。
「失礼します……って、兵長?だ、大丈夫ですか?」
クレアはリヴァイの傷の処置をするつもりだったのだろう。両手に医療道具を抱えてやってきたのだが、いざ執務室に入ったら顔色を悪くしたリヴァイがソファにもたれかかっていたのだ。
思わず大きな声を上げてしまった。
「そんな大きな声をだすな…」
「…兵長、出血のせいでご気分悪くされたのではないですか?」
「お前は何しに来たんだ?負傷兵の治療はもういいのか?」
「……は、はい。負傷兵の治療が一通り終わったので、兵長の傷の具合を診に飛んで来ました……」
「そうか…」
負傷兵の治療が終わったのならもういいだろう。
リヴァイはクレアの処置を素直に受けることにした。