第36章 奇行種と新兵たちの初陣
「チッ、なんなんだよ、アイツは。」
目にも止まらぬ早さで自身の頭に布を巻いて行ってしまったクレア。
止血をしてくれたのは十分理解できたが、アルコールの消毒が傷口にしみてズキンと痛みが走った。
「それはね〜リヴァイ、クレアの愛だよ!愛!」
「うるせぇ、クソメガネ…」
ニヤッと笑ったハンジに肘でグリグリと突っ込まれたが、リヴァイは返す言葉もなくただ悪態をつくことしかできなかった。
そんな事分かってる。
リヴァイは心の中で呟くと、アルコールのしみるこめかみを軽く押さえながら、集まってきた班長達と臨時会議に入った。
「クレアー!!待っていた!!早く治療に入ってくれー!」
先に着いていた兵士が大きな声でクレアを呼んだ。
「お待たせしました!すぐに!!」
「負傷の重症度はあらかたわけた。治療を手伝える者も何人かいるから早速とりかかろう。」
「ありがとうございます!!すぐに治療に入ります!」
クレアは医療バックを広げると、素早く準備を始めた。今回は巨人の出現も多い上、まだ壁外だというのに多数の負傷者が出ている。
立体機動が優位に使える森の入り口で精鋭の兵士達が巨人の接近に目を光らせてはいるが、ここもいつまで留まっていられるのか分からない。
クレアは重症兵士の処置をしながら手伝いに入っている兵士の1人に声をかけた。
「す、すみません、ここであとどれくらい治療ができるのか分かりません。今のうちに軽症のグループの中をさらに分類しておく必要があるので、お願いできませんか?」
「分かった、どうすればいい?」
「出血量が少なくて自力で馬に乗れる人は壁内に戻ってからの治療にします。骨折や脱臼などの疑いがある人と、まだ出血が止まっていない人もグループ分けしておいて下さい。」
「承知した!!」
できれば全員の応急処置を終えてからこの場を発ちたいが、無理であった時も想定して動かなくてはならない。
クレアは不測の事態にもすぐに対応できる様に、あれこれと考えを巡らせながら処置をしていった。