第36章 奇行種と新兵たちの初陣
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信煙弾が上がった先の森に到着すると、既に多くの班が到着しており、負傷者のトリアージを行っていた。
「おーい!!エルヴィーン!!」
「ハンジ!!無事だったか!」
ハンジが手を振ると、先に到着していたエルヴィンと、その横には1番無事を確認したかったリヴァイの後ろ姿が見えた。
「エルヴィン団長!リヴァイ兵長!」
馬から降りると、クレアも思わず大きな声で叫ぶ様に呼んでしまった。
リヴァイはその声に反応して振りむくと、無事な姿に安堵の表情をするが、反対にクレアはビクリと凍りついてしまう。
「兵長……ケガをしてるんですか?」
振り向いたリヴァイの顔半分は真っ赤な血で染まっていたのだ。
「あぁ、だがたいしたことはない。気にするな。」
しかし、子供の頃から沢山の外科的処置が必要なケガを見てきたクレアにそんな嘘など通用する分けない。
拭き取りきれずに乾いた血の跡の上からはまだ流れ出ている血液が頬を伝い、マントの肩を濡らしていた。
かなり深く切っている。
それにだいぶ出血もしている。
「兵長!すぐに処置を……」
デイジーから医療バックを持ってきたクレアがリヴァイの腕を掴むが、厳しい顔で断られてしまった。
「!?」
「クレア、ちゃんと周りを見ろ。俺のトリアージはどう大袈裟に見積もっても黄色だ。後でいい。俺らはこれから班長達が揃いしだい臨時会議だ。」
「………………。」
いいや………
違う……
その出血量はすぐに処置をしないと危険だ。
だが、リヴァイの言う通りに周りを見れば目を覆いたくなるような程のケガ人がいた。
リヴァイの処置を優先させたいが、ここに私情は挟めない。
「わ、分かりました。ですが……!!これだけは失礼します!!」
「?!」
クレアは厚手のガーゼにアルコールを含ませると素早い動きでリヴァイの傷口に当て、止血帯でグッと縛ると、逃げるように負傷兵の元まで走って行った。