第36章 奇行種と新兵たちの初陣
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「クレア、今大丈夫か?」
「あ、団長!!」
声をかけてきたのはエルヴィンだった。
「クレア、応急処置はどんな感じだ?話し合いの結果、今回の壁外調査はここまでとし、帰還することにした。巨人の出現が多く、新兵を中心に犠牲が多数出てしまった。」
「……!!」
新兵を中心に……
認めたくはない…
認めたくはないが、ここで姿を見かけない兵士達はおそらくはもう帰らぬ人となってしまったのだろう。
やるせない想いを吐き出したいが、今はそんな事をしている場合ではない。
クレアはグッと拳を握ると、敬礼をしながら状況報告を始めた。
「報告致します!自力で馬に乗れる者の処置は壁内へ戻ってからすることにしました。重症者と骨折した者は応急処置をして荷馬車に。軽症でも出血量が多めだった兵士も無事に処置が済みましたが、単独での騎乗は危険な為、2人乗りで帰還することを提案します。」
「こんな短時間でこの人数を処置したのか……」
エルヴィンは真っ直ぐに自身を見つめながら報告をするクレアに、驚くと同時に感心をした。
「手伝いに入って下さった方もいたので、なんとかできました……」
「そうか、助かった。」
手伝いに入っていた兵士がいたのはもちろん見ていたが、これはクレアの医療技術があってこそだ。
エルヴィンは少し表情を曇らせているクレアに労いの言葉をかけてやると、ポンッと両肩を叩いた。
「では、間もなく帰還だ。クレアも急いでガスと刃を補充しなさい。準備ができ次第出発する。」
「は、はい!!」
「総員、トロスト区へ帰還せよ!!」
エルヴィンの号令を合図に生き残った兵士達は馬を走らせトロスト区へ向かった。
志高く、輝いていた若き命を奪った巨人にクレアの心は負の感情でいっぱいだったが、どれだけ自分が嘆いた所で死人は蘇らない。
今はとにかく無事に帰還すること。
そして、何があっても前に進むことを止めてはいけない。
クレアは何度も何度も自身に言い聞かせながらデイジーを走らせた。