第36章 奇行種と新兵たちの初陣
よく見れば、辺りは血だらけだ。
「………チッ。」
リヴァイは思わしくない展開に盛大に舌打ちをする。
「恐らく襲われた直後でしょうか…」
「兵長!!生存者がいます!!」
「なに?!」
エルドとグンタの言葉に目をやると、がたいのいい兵士が情けなくも尻をつき、何かを抱えて絶望していた。
あれは……
よく見れば、新兵のアンドレだった。
抱えてるものはよく分からなかったが、生きているのならば、1人でも多く壁内に戻してやらなければ、兵団の存続自体が危うくなる。
あの様子から察するに、班が全滅して自身が生き残ることを諦めたのだろうか。
こういうヤツは助けてやっても自分だけが生き残ったことに罪悪感を持ち自滅することが多いが、躾直しに成功すればまた兵士として働くことができる。
それにクレアが手をかけて面倒をみていた新兵の1人だ。ここで見殺しになんてできる訳がなかった。
「お前ら4人で前方の3体を討伐しろ!!おれは新兵を救出する!!」
「「「「はい!!!」」」」
リヴァイは班員に命令を下すと、ダスゲニーの鞍に立ち、アンドレに向かっていった。
もう巨人がアンドレに向かってその大きな口を開けている。エルド、グンタ、オルオ、ペトラ、急げ!!!
なんとか間に合ってくれ。
「おいアンドレ!!!目を開けろ!!!」
リヴァイは腹の底から叫んだ。
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目を閉じたらやたらと周りが静かに感じる。
死の覚悟ができているのかは不明な思考状態であったが、アンドレは真っ暗な瞼の裏側に浮かび上がっている可憐なクレアを懸命に目で追っていた。
とても小さくて幼く見えるのに4歳も年上で、いつも一生懸命に自分達新兵を励ましてくれたクレア。
いつしかその姿を目で追うようになってしまったが、これが恋なのかは分からない。
そんなクレアが立体機動で飛び回りながらクルリと自分の方に振り向いてくれたが、その時だった。
──「おいアンドレ!!!目を開けろ!!!」──
「!!!」
鈍器で頭を殴られたような怒号で思わず目をあけると、目の前には大口をあけた巨人が迫っていた。