第36章 奇行種と新兵たちの初陣
しかし……
「キャアアアア!!」
メグはなんとか後方にいた6m級の巨人の動きだけでも止めたいと飛び上がるが、膝裏へ攻撃する侵入角度が甘く、暴れた巨体によって吹き飛ばされてしまう。
「う……うぅ……」
石造りの建物に頭を強く打ち、意識を朦朧とさせながら血を流しているとメグはそのまま巨人に摘まれ口の中に放り込まれてしまった。
──ガチッ──
──ボトッ──
「……………っ!!」
巨人が口を閉じる瞬間にはみ出ていた足が切断されると、ボトリと無慈悲に落っこちる。
「ア…リダー…さん……もう…逃げて下さい……グ……ガハッ!!」
──バキバキバキッ──
そして、巨人に掴まれてしまっていたエミリーもついに全身の骨を砕かれ、口から噴水の様に血を噴き出すと、スルリと巨人の口の中に吸い込まれてしまった。
「レンさん……メグ……エミリーさん……」
エミリーが噴き出した血しぶきを顔に浴びると、アンドレは石像の如くかたまり微動だにできなくなってしまった。
「クソっ!!アンドレ!馬を走らせろ!悔しいが撤退だ!!」
息を上げたアリダーが馬に乗り、アンドレの元に駆け寄るが、目の前の惨状を受け止めきれなかったのか、アンドレはまさかのこの状況で馬から降りてしまった。
「おい…アンドレ!!何をやっている!早く馬に乗れ!」
しかし、アンドレはフラフラと歩き出すと、切断されたメグの足を抱えて訴えだした。
「コイツも!コイツも俺と一緒で実家に家族がいるんです!!せめて…これだけでも…持って帰ってやらないと……」
そこまで言いかけた所で、メグを飲み込んだ巨人がアンドレを背後から飲み込もうと大口をあけて勢いよく向かってきてしまう。
「アンドレッ!!」
アリダーはとっさにアンカーを巨人に向かって射出し跳び上がったが、ブレードの入りも甘く、着地にも失敗し倒れた所を握り潰されてしまった。
「あ…あぁ…アリダーさん……」
バキバキと音を立てて無残にも食われてゆく班長の最後の言葉は、“逃げろ…”だった。