第36章 奇行種と新兵たちの初陣
初陣で新兵に討伐をさせるかどうかは日頃訓練を見ている現場の班長に判断が委ねられている。
死を覚悟で、討伐補佐をさせる班長、まずは生き延びさせるためになるべく戦闘は避けさせる班長、方針は様々だが、アリダーは後者の考えだった様だ。
新兵のアンドレとメグには下がるよう指示をだした。
しかし次の瞬間…
それは…
ほんのまばたき程の…
一瞬の出来事だった……
「キャアアアア!!!」
8m級の足を止めようと討伐補佐に入ったエミリーが後ろから迫ってきた巨人に掴まれてしまう。
「エミリー!!!」
最初の標的から目を離してエミリーの救出に向かったレンだったが、それが仇となってしまった。
自分に背中を向けたレンに8m級の巨人は思い切り口をあけると、勢いよく下半身を噛みちぎってしまったのだ。
「ぎゃあああ!!」
「レ……レン……!!」
ギリギリと万力の如く握力をかけられながらも必死にレンを呼ぶエミリーだが、自分を助けようとしてくれた優しくも闘志に溢れた視線は儚くも曇り、千切られた上半身はビシャリと音を立てて地面に落下し血の海を作った。
「エミリー!!死ぬな!!今助ける!!」
班長アリダーがエミリーを掴んでいる巨人の腕を切り落とそうと飛び出すが、他に2体も巨人がいて、邪魔が入る。
例え8m級未満の巨人とはいえ、一度に3体相手にするなど、リヴァイやミケ班、ハンジ班クラスの精鋭でなければ難しいのだろう。
いくら班長とて3体の相手は無理だ。
下がってろと言われた新兵2人であったが、意を決したメグが飛び上がり、班長の補佐に買って出た。
「メグ!!無理するんじゃねぇ!!」
飛び出してきたメグに班長は一喝する。
「大丈夫です!!せめて足だけでも止めてみせます!!」
メグはこの窮地からなんとか脱却するためブレードを抜き、震える指でトリガーを引いた。