第36章 奇行種と新兵たちの初陣
壁外に出てから割とすぐに次々と赤の信煙弾があがると、新兵であるアンドレとメグの緊張状態は、最高値までに上昇してしまっていた。
覚悟はしていたつもりだったが、こんなにも早く巨人が迫ってくるとは……もう手のひらからは汗がダラダラとあふれて、革の手綱を湿らせてしまっている。
それにこの状況に班長を含めた上官の3人は顔をしかめてピリピリしているのだ。
もしかすると、あまりよくない状況なのだろうか……
馬上から声をかけることも可能だったが、その質問の答えが予想通りだった場合、冷静でいられる自信がなかったため、アンドレは何も聞かずに黙って馬を走らせた。
緑の信煙弾に従いながら馬を走らせていると、旧市街地が見えてくる。
建物は人々が住まなくなって何年もたつため、窓ガラス等は割れ、だいぶ廃れていた。
「………………………」
かつてはここにも人々が暮らし、生活をしていたんだな……
手紙は書いたが、田舎町に住んでいる実家の家族は今頃何をしているたろうか……
ふとアンドレがそんなことを考えた時だった。
──ガラガラガラガラ!!──
──ガシャーーン!!──
「!!?」
大きな衝撃音で頭を殴られた様な感覚に陥ると、すぐ前方には建物に身を潜めていた巨人が3体、姿を現した。
「う、うわ……」 「キャッ……」
不気味な巨体に不気味な表情、巨体の割には素早すぎる動き。初めて見る巨人に、アンドレとメグは凍りついてしまう。
巨人はおそらくは8m級未満と思われるが、大きな巨人と比べると動きが早い。
巨人との距離も近いため信煙弾を打っても逃げ切れなさそうだ。
「チッ、仕方ねぇ!!レン、エミリー討伐だ!アンドレ達は下がってろ!まずは手前の8m級からだ!」
班長のアリダーが討伐の命令を下す。
「「はい!!」」
3人はすぐそこまで迫ってきている巨人を討伐するためアンカーを射出すると、ブレードを抜き飛び上がった。