第36章 奇行種と新兵たちの初陣
「そんな事、思いません…」
「!?」
「私だって、壁外調査の前は不安な気持でいっぱいです。それにそれは誰しもが同じ気持ちです。私は巨人の討伐は得意としてますが、壁外調査では何が起こるかわかりません…現に2度も生死の境を彷徨った訳ですし…なので、兵長をそんな風に思った事など、ありませんよ。それに……」
「……なんだ?」
「私に何かあれば、兵長が必ず助けに来てくださると言って下さったではないですか。それは、確実に約束できるものではないと承知の上ですが、それを励みにすれば私はどこまででも頑張れます…」
「そうか……そうだったな。情けない事を言って悪かった…」
凛とした表情で気丈に答えたクレアに胸を打たれると、リヴァイはもう一度キスをして抱きしめた。
「そんなこと…言わないで下さい。前に言ったじゃないですか。そういう所も、私の前だけなら嬉しいと…」
「そうだったか?」
「はい、そうです。」
2人ははにかむように笑うと、無事の帰還をお互いに願い、食堂へと向かった。
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「あっ!ハンジさん!また信煙弾が!!」
「チッ、今回の巨人達は素直に進ませてくれるつもりはないみたいだねぇ……」
今回の壁外調査は前回拠点を完成させた地点からさらに南を目指し、地図上では残ってると思われる古城跡を目指すというものだった。
次の拠点候補がその古城跡という訳だ。
しかし、トロスト区を出発して少したったあたりから赤の信煙弾が何度も上がっている。
時折黒の信煙弾も上がるため、奇行種の討伐に入ってる班もいるはずだ。
まだまだ壁外調査の前半でここまで巨人に遭遇するとは、あまり幸先はよくなさそうだ。
ハンジとモブリットの表情も少しかたい。
デイジーの手綱を握るクレアの手にもグッと力が入ってしまった。