第36章 奇行種と新兵たちの初陣
どんなに精神力を鍛えたところで、仲間達が巨人に食われていくのに慣れる日など決してやってはこない。
しかし、どれだけ仲間を失っても、絶望の淵に立たされても調査兵団に入団した以上、戦い、前に進まなくてはならないのだ。
現に今、見つめ合っているこの2人だってそうだ。
壁外調査の日の朝は必死に自身を奮い立たせても、互いを失うかもしれない不安が容赦なく己の心臓を射抜いていく。
だが、その全てを拭い去ることなどできはしないのだ。
「そうか……新兵達は、お前が親身になってあれだけ相談に乗ったんだ。きっといろんな面で救われた筈だ。」
「そ、そうでしょうか……」
「あぁ、そうだ。」
リヴァイはそっとクレアを腕の中に包み込むとグッと力を入れて抱きしめた。
力強く鼓動する心臓の音を確かめると切なくリヴァイは呟く。
「……巨人にふっ飛ばされて行方不明はもうゴメンだぞ……」
「は、はい……気をつけます。」
「骨を折ってぶっ倒れるのも勘弁だ。」
「そ、それは……」
生きて帰れる保証もない壁外調査で、怪我をするななんて無茶な話だ。しかし、戸惑うクレアになおもリヴァイは続ける。
「…絶対に、死ぬんじゃねぇぞ…」
「兵長……それが…1番難しいと、前にも言ったではないですか…」
「それでもだ…。」
無責任な事は言えないと戸惑っているクレアに痺れを切らしたリヴァイは、強引に唇を奪いなんとか自身の不安な気持ちを払拭しようとする。
自分を人類最強などと言い出したのは一体どこのどいつだ。
クレアの前では周りが見えなくなり、こんなにも情けない男だ。
人類最強の名が聞いて呆れる。
「お前はこんな俺が男として情けないとは思わないのか?」
唇を離したリヴァイはそっと問いかける。
しかし、クレアはなんの迷いもなく答えを出した。