第35章 そしてリヴァイは考えた
──数日後──
クレアはポタポタを精製されていく媚薬をボンヤリと見つめながら若干の疲労感と、大きな寂寥感に苛まれていた。
連日新兵達は、クレアが1人になるタイミングを狙ってるかの如く声をかけてくる。
リヴァイから忠告を受けていたため、少しくらい仕事を手伝いたいと思っていたのだが、新兵達の気持ちも痛いほど分かるため、蔑ろにできない。事はなかなかうまく運んではくれなかった。
そして、朝は朝で仕事が山積みだ。
会話の殆ども仕事の内容なので、プライベートな事を話す時間などほんの数分程度だ。
そのせいか、リヴァイの機嫌も若干悪い様に感じる。
特に喧嘩をしたわけではないのだか、クレアはこんな状態のまま壁外調査へはでたくなかった。
そんな事を考えていたら、媚薬の抽出が終わった様で、クレアは瓶に移し替えるため、必要な物を取りに立ち上がっだが、その時だった。
「あー、しまった!クレア!コレ急ぎの資料なの。それ、私変わるからリヴァイの自室まで持って行ってくれない?」
「え?今からですか?それに執務室でなくて、何故自室なんですか?」
「なんか、最近多忙で疲れたから今日は早く上がるって言ってたんだ。まだ寝てなきゃいいんだけど。」
「そ、そうなんですか?」
するとハンジはグイグイと席を変わると、資料をクレアに無理矢理持たせて執務室から追い出そうとした。
「キャ、ハンジさん?」
「もし寝てたら戻ってきていいからねー!あっ、戻ってこなくてもいいからねー!」
──バタン──
「……いったいどうしちゃったのよ、ハンジさんったら。」
ニコニコと何やら嬉しそうに手を振りながら追い出してきたハンジに、若干の疑問を覚えつつも、正当な理由でリヴァイの自室まで行けることは、今の自分にはとても嬉しかった。
さすがの新兵も、こんな時間にこんなところまでは追いかけて来ないだろう。
クレアは小走りで長い廊下を走っていった。