第35章 そしてリヴァイは考えた
「本当はこの間の苺酒をだしてやりたいんだけど、熟成までにはあと2ヶ月くらいかかるんだ。今は安物のワインしかないけど、我慢してね。」
そう言うとハンジはワイングラスにトクトクと豪快に注ぐと、少し強引に“チンッ”とグラスを合わせて一方的な乾杯をしてからクイッと口をつけた。
「味はまぁまぁかな。」
ハンジは白の辛口ワインがお好みだ。
味はそこそこだった様だ。
安物のワインを堪能しながら黙っているリヴァイにどう話を切り出させてやるか考えていると、思いのほかすぐに喋りだした。
「おいクソメガネ、クレアの仕事を少し休ませることはできないのか?」
「え?いきなりどうしたの?」
まぁ、話の内容は十中八九クレアの事だと思ってはいたが、いきなりすぎる内容で思わず聞き返してしまう。
「アイツ、新兵達からの悩み相談に引っ張りだこでまったく2人の時間がねぇ。なんとかならないか聞きに来た。」
「んー、まぁリヴァイの頼みならできない事もないけど、正直こっちも人手が足りてるとは言い難い。」
ハンジは困ったように腕を組むとチラチラとリヴァイにアイコンタクトを送る。
おそらく“タダ”でクレアを譲る気は無いようだ。
「…………」
そうくるだろうと思っていたリヴァイは、その視線に軽く溜息をつくと、重い口を開いた。
「はぁ…クレアを一晩休みにできるなら何か開発中のモノを試してやってもいい。」
「お、リヴァイ!!話が分かるねぇ!!」
「そのかわり、最高に滾るヤツにしろよ……」
「おぉ!!いいねぇ!!そういうリヴァイもいいねぇ!!分かったよ、そういう事なら最っ高に滾るヤツを調合するから待っててよ!!すぐに用意するから!」
「あぁ。了解した。」
ハンジはソファをピョンと飛び上がると、保管庫からいつも精製している媚薬を取り出し、それに手を加えたいのか、試験管やらなにやら実験器具を取り出し作業を始めた。