第35章 そしてリヴァイは考えた
体格のいいアンドレからしてみればクレアはどう見ても妹のようにしか見えない。
小さな身体で、小さな手で、一生懸命に馬具の手入れをしていた手を止めて、わざわざクレアは真剣に自分の話を聞いてくれた。
そして今は柔らかい笑顔を向けてくれている。
その吸い込まれてしまいそうな慈悲深い笑顔に思わず胸がドキドキと煩く騒ぎたてる。
これが恋なのかはわからない。
クレアは4歳も歳上なのだ。
でも、思わず触れたくなってしまったのは事実だ。
しかしリヴァイの顔がちらついたアンドレはそれを行動にうつすことができなかった。
「クレアさん…ありがとうございました…俺、きっと生きて戻ってきますから…その…応援頼みます!」
「もちろん!またいつでも相談にのるから。」
するとアンドレは笑顔で頷き、少し照れながら立ち上がると、走って厩舎を出ていった。
その後も、クレアはよく新兵に声をかけられては相談に乗ることがますます増えた。
技術的なものからメンタル的なものまで兵士により様々だったが、クレアも彼らの気もちがよく分かるぶん、真剣に話を聞いてやっていた。
そうなると面白くないと思う人物が1人。
リヴァイだ。
クレアは朝はもちろんいつも通りリヴァイの仕事を手伝っていたが、夜ハンジの執務室に行く前に顔を出せるときは出そうと思っていた。
しかし、そのわずかなタイミングや昼休憩等に話しかけられる為、なかなかリヴァイとゆっくり話をする事ができていなかった。
心なしか朝も大量の仕事をこなしながらイライラしている様な気がしていたが、クレアには真剣に悩みを打ち明けてきてくれる新兵達を前にどうすることもできなかった。
──リヴァイ執務室──
「クソッ……」
夜の帳が落ち始める頃、その部屋の主はなかなか訪ねて来てくれない人物に対して、苛立ちを感じ、まったく仕事が手につかないでいた。