第35章 そしてリヴァイは考えた
「声を掛けられると言っても以前のように囲まれて質問攻めにされたりはしていません。やはりみな初陣に向けて色々思う所があるのでしょう。消化しきれない思いを相談されることが多くなりました。」
「………………」
愛しいクレアを囲い込んで質問攻めにする事など当然いい訳がないが、1人の所を狙って声をかけ、優しい言葉を独り占めにされるのも、リヴァイにとってはもちろん心持ちの良い事ではなかった。
「はぁ…お前も人が良すぎる。そんな新兵相手にしている時間があるなら適当にあしらって俺のところに来いよ。」
「え?」
「壁外調査前で仕事がクソみたいに増えてうんざりだ。」
リヴァイはクレアの腕を引くと、自身の膝に跨がらせて視線を合わせた。
「……俺の相談には、乗ってくれないのかよ?」
「へ…兵長…」
その視線は少し切なげだった。
「す、すみません……兵長を蔑ろにするつもりはないのですが…あっ、なんか今のは上からな言い方でしたね…ご、ごめんなさい…ですが、新兵達もそれぞれ本当に一生懸命でなかなか邪見にもできなくて……ですから…その…」
リヴァイは身振り手振りで必死に説得しようとするクレアが可愛くてしばらく見ていた。
もちろん、クレアの言いたい事もよく分かっている。
自分がそうであったように、新兵達がクレアに惹きつけられる理由も良くわかる。
だからこそ、心がざわついたのだ。
クレアを本気で奪いに来るやつが出てきやしないかと。
「はぁ…もういい。お前の言いたい事は分かってるつもりだ。だが、お前をただの先輩兵士としてではなく、特別な想いを抱くような輩が現れないか少し気をもんだだけだ。」
そう言うと、クレアを見つめたまま、まだ結われていない長い蜂蜜色の髪の毛を指に絡ませるように梳いていく。
それは、少しざわついた自身の気持ちを鎮めるかのように。