第35章 そしてリヴァイは考えた
「…………酒に漬けて白くなった苺がこんな風になるのか?」
クレアの手の中には鮮やかに光り輝く赤い小瓶。
ハンジ同様リヴァイもまずそこに驚いたようだ。
「はい…また、加熱をすると色は戻ります。たくさんできあがったので、少しお持ちしたのですが…兵長甘い物はあまりお好きではないので…あの…その…」
クレアは差し出したはいいが、どうしたらよいのかわからず、しどろもどろになり俯いてしまった。
すると、リヴァイはクレアの手からその小瓶を受け取ると、蓋をあけてみる。
パカッと開けた瞬間に広がる甘酸っぱい香り。
その心地よい香りに迷うことなく指を1本瓶に入れると少しすくい上げ口に入れた。
新鮮なまま酒に漬けたからであろうか。先月行った苺畑の情景を鮮明に思い出す事ができる。
「……確かに甘いが、悪くない。」
「!!」
リヴァイの“悪くない”は褒め言葉だ。
その言葉を聞いてクレアは少しホッとした。
「せっかくだから朝飯の時に持って行こう。」
「よ、良かったです。ありがとうございます!」
クレアの表情はパァッと明るくなる。
普段甘い物を食べないせいかコイツはきっと自分に渡すかどうか大分迷ったんだろう。
今のこの安堵した表情をみれば一目瞭然だった。
「ところでお前、最近やけに忙しいみたいじゃないか。」
「え?」
クレアは再び仕事を再開させようと書類にてをのばすが、リヴァイの言葉に思わす疑問符を浮かべてしまった。
「新兵達のことだ。最近またやたらと引っ張りだこじゃないのか?」
表情はいつも通りだが、その声色は少しはかり機嫌が悪そうだ。
「そんな、引っ張りだこという程でも…しかし、壁外調査の日程が決まったせいか、一度はハンジさんの噂で距離を置かれてしまった新兵達ですが、最近またちょこちょこと声をかけられることが増えてきました。」
「チッ、そうなのかよ…」
やはり、機嫌はあまり良くなさそうだ。