第35章 そしてリヴァイは考えた
ハンジはモブリットの言葉に少し冷静さを取り戻すと、少しため息をつきながらクレアに謝罪をした。
「ご、ごめんねクレア。クレアは本当になんでもできちゃうからさぁ…ちょっと自分の中のテンションがおかしくなっちゃった。アハ、アハハハハ!!」
苦笑いをしながらもカラカラと笑うハンジにクレアは少し複雑な気分になった。
“お嫁さん”
ハンジが何気なく言ったのはもちろん分かっている。
調査兵であるが故に、今までそんな言葉を自分と照らし合わせてみたことなど只の一度もなかった。
一瞬リヴァイの事が脳裏に浮かんだが、調査兵である以上結婚など無理な話だ。
無理も何も前例すら聞いたことがない。
この兵団にいる以上はまったく無縁である事は明らかだ。
なんだか少しチクリと胸が痛んだが、大好きなハンジが自分を褒めてくれた事には変わりない。
クレアは小さな小瓶を2つと、中くらいの瓶を1つ棚から取り出すと、粗熱のとれたジャムを均等に淹れていった。
「ハンジさん、モブリットさん。少しですが宜しければ明日の朝食で召し上がって下さい。」
そう言って小さな小瓶を1つハンジに差し出した。
「え?私達の分?リリアンに作ってたんじゃないの?」
「思ったよりもたくさんできましたから。でもちゃんとモブリットさんと分けて下さいね!!」
「分かってるよ!ありがとう!!」
「クレア、俺の分までありがとう。」
「もう1つの小瓶はリヴァイにあげるの?」
ハンジがニヤニヤと肘でクレアを小突く。
「は、はい…せっかく美味しくできたので、どうかなと思ったのですが…兵長甘い物はあまり得意ではなさそうなので…迷います。でも……」
だからといってハンジやリリアンに渡してリヴァイにだけないとなるとあまりよろしくない展開が待ち受けていそうでクレアは少し迷ってしまった。