第35章 そしてリヴァイは考えた
「ん?クレア?いったい何を始めるの?」
ハンジは砂糖をクレアに手渡したが、いまいち何が始まるのかよく分かっていない様子だ。
「あ、ハンジさん。お砂糖は高価な物なのにありがとうございます!!」
クレアは白くなった苺達をゴロゴロと鍋に入れると、軽く潰しながら火を通していく。
「この苺で甘いジャムを作って、リリアンにプレゼントしたら喜んで貰えるかもしれません。」
資金ぐりの厳しい調査兵団の食事は本当に毎食質素なメニューだ。さつまいもの煮物が女兵士の人気メニューになってしまうくらいなのだ。
当然砂糖をふんだんに使ったジャムなど朝食で出ることはない。
クレアは甘いジャムを作って少しでも初陣の緊張感をほぐしてやろうと考えたのだ。
「クレアの考えは分かったけど、もうその苺は色素も味もぬけちゃってるよ?真っ白なジャムってあまり美味しそうには見えないと思うんだけど……」
昨年の秋に食べたクレア特性の巨人模型は最高の味だった為、彼女の料理の腕を疑ってる訳ではないが、全ての旨味を出し尽くした苺が美味しいジャムになるなどハンジは考えられなかった。
「そうでもないんですよ、ハンジさん。」
「え?!」
半信半疑で鍋を覗くと、そこには色を取り戻した苺達がグツグツと音を立てて煮られていた。
「白くなってしまった苺も、また火を通すと赤みが復活するんです。それに普通の苺なら確かに味は落ちますが、これは最高品質の苺なので、お酒に使ったあとでも十分に美味しいジャムができると思います。」
「へぇー、クレアは本当に何でも知ってるね!!」
「たまたま、昔母が作っていたのを思い出しただけです。そのため作るのは初めてなので、うまくできるかは自信ありませんが……」
クレアは少し心配そうに砂糖を鍋に入れていくと、トロミが出るまでじっくり煮込んだ。