第35章 そしてリヴァイは考えた
「春に、ハンジさんが流した噂で、一度は距離を置かれていたみたいですが、最近またちょこちょこと声をかけられることが増えてきました。」
「へぇ?!そうなの?!」
ハンジは何かを思い出したのか、ぴょんとソファを降りると、棚をゴソゴソとあさり出した。
「身近な所だとフレイアの後輩のリリアンでしょうか…できるだけフレイアと3人で食事をするようにしてるのですが、やはり1人になると色々不安な気持ちになってしまうそうです。」
「そうだったのか…」
「居残り訓練もしたいと言っていたのですが、疲労が溜まりすぎても危険ですし、今は止めています。少しでも気分を和らげてあげたいのですが……なかなか難しいですね。」
「そうだな…体力のあり余ってる男兵士は別として、あまり根をつめすぎるのはいい事ではないからな。」
するとハンジが2人の会話を聞いていたのか聞いていなかったのか不明だが、棚から目当の物を見つけ、雄叫びを上げた。
「おおーーーー!!いい感じじゃーん!」
ハンジが棚から取り出したもの。
それは、1ヶ月程前にリヴァイとクレアの土産で漬けた苺酒の入った熟成容器だった。
「あれ?ハンジさん…それは…」
熟成容器をみると、見事に苺の色に染まったホワイトリカーが容器のなかでゆらゆらと揺れていた。
「そう、先月君たちがお土産でくれた苺だよ。熟成にはまだもう少しかかるけど、苺を取り出さなくちゃいけなくてね。」
すると、ハンジは慣れた手付きで苺と酒を分けると、ザルには色が抜けた真っ白な苺が無造作にシンクに置かれていた。
「ハンジさん、これはもう食べないですよね?」
「うん、もったいないけど、それはもう食べないよ。」
「ここに、お砂糖はありますか?」
「え?砂糖?一応あるけど……?」
それを聞いたクレアは、何か閃いたのか、媚薬の精製をモブリットに無理矢理バトンタッチすると、簡易キッチンから鍋を探してバタバタバタと何やら準備を始めた。