第34章 その数、無制限
──カタン──
何度かリヴァイが「もうやめとけ」と制止をしたものの、「そんな勿体無いことできません!」と変な意地をはりながら次から次へと平らげていったクレアであったが、流石に限界がきたようだ。
ナイフとフォークを置く無機質な音が鳴り響く。
「兵長…ご馳走さまでした…」
「あぁ、もう気は済んだか?」
さすがに全部は食べ切れなかった様だが、だからと言ってそこまで残していなかった。
少しボンヤリとしているクレアにリヴァイは呆れた様に声をかける。
「はい…私、理想郷を見たような気がします…」
「………………」
理想郷…そこまで言われてしまえばもう絶句である。
昨年の秋にレストランに連れて行った時も思った事だが、クレアは満足に満腹になると、何故だかエロティックな表情で隙きだらけになってしまう。
サディスティックな笑みを浮かべながら立体機動で飛びまわる奇行種と同一人物とは思えない程にだ。
そうなれば、今度は自分が満足するまで付き合ってもらうと言いたげに、リヴァイは席を立つと、部屋に戻るぞとクレアの手を引いた。
「言っとくが、吐くなよ。」
「だ、大丈夫です!何度も言わせないで下さい…」
夕食を終えた2人はダイニングルームをでて部屋まで戻っていった。
──パタン──
部屋のドアを閉めてしまえばもう2人の邪魔をするものはいない。
ここは兵舎ではない。
遠く離れた田舎の宿屋だ。
そう思えば思うほど、普段無意識に制御していたもののタガが外れ、リヴァイは急に解放的な気分にさせられた。
兵舎の中という背徳感に興奮を煽られながら致すのも悪くはなかったが、やはり恋人同士水入らずの夜というのも当然ながら必要なシチュエーションだろう。
自然と下半身の熱にスイッチが入ってしまい、後ろからクレアを抱きしめようとしたが、あろうことか何かを思い出したクレアは、対人格闘さながらの瞬発力でリヴァイをかわすとクルリと振り返って見せた。
こんな事、たらふく食べたばかりの人間が無意識にできる芸当では中々ない。
「おい、どうした?」
リヴァイは軽く眉間にシワを寄せてクレアに問いかけた。