第34章 その数、無制限
「……………………兵長…」
次々に並べられる豪華なデザートに思わずかぶりつきたくなったクレアであったが、苺のタルトを目の前に置かれた瞬間その手はピタリと止まってしまった。
──喜んでは貰えたか?──
そんなの、そんなの愚問だ。
そんな、そんな返事など決まっているではないか。
リヴァイは自分に何を贈るか悩んだと言っていた。
毎日忙しく執務に訓練をこなす中、リヴァイがいったいどんな顔をして、どれだけの時間を掛けて用意してくれたのかと考えれば考える程、自然と胸の奥がカァッと熱くなってしまうのを感じる。
当然嬉しくない筈がない。
クレアはナイフとフォークを持ち直すと、目の前の苺のタルトを切って口に入れた。
「そんな…兵長…嬉しすぎて……喜んでるに決まってるじゃないですか……本当にありがとうございます。」
「そうかよ。頑張って調べた甲斐があったな。」
リヴァイはその言葉が聞ければ十分だった。
「でも何故でしょう…このタルト、しょっぱいです……」
「……………………………」
クレアの顔を見ればボロボロと涙を流し、目と鼻の頭を真っ赤にしながらタルトを頬張っていた。
オマケに鼻水まで垂らしている。
「はぁ…そんだけ汚ぇ顔して食ってたら当たり前だろ……ホラ、こっちを向け。」
リヴァイは席を立って前屈みになると、ナプキンを使ってクレアの目元と鼻を拭いてやった。
「ず、ずみません…嬉しくてつい……」
「ったく世話のヤケる奇行種だな。」
自分の贈ったプレゼントに予想以上の感動をして涙を流すなど、なんていじらしい奴だ。
こんな姿を見せられてしまえば今すぐにでもベッドに沈めて抱きたくなってしまうではないか。
リヴァイは早々に切り上げて欲しい所だったが、目の前に並べられたデザート達に釘付けのクレアは、昼間の苺畑同様満足するまでテコでも動かないだろう。
満足するまで時間がかかると踏んだリヴァイは女将を呼び、追加の紅茶を注文した。