第34章 その数、無制限
こんなデザートサプライズ、リヴァイはどうして教えてくれなかったのだ。
知っていればパンに手を伸ばす回数を減らしたと言うのに…と焼き立てで美味しかったパンの誘惑に何度も負け、手を伸ばした自分に深く後悔をした。
「そ、そんな下げるだなんて!デザートは別腹と言いますし、頂きます!頂かせて頂きます!」
「そうかよ…」
若干言葉遣いがおかしくなってるクレアに苦笑いを浮かべたリヴァイだったが、この様子だと本当に食べるのだろう。
女将に目配せをして、テーブルに並べさせた。
苺のパフェ、プルプルの苺のババロア、苺のレアチーズ、苺のプチシュークリーム……
「お、美味しそう……」
どれも魅力的なデザートだ。そんなものを目の前に並べられてしまえば、先程まで満腹だったのがどこかへ行ってしまったかのように、みるみると食欲が湧いてくるから女子の別腹とは恐ろしいものだ。
次々とテーブルに並べられていくが、最後に女将がクレアの前に置いたもの。
それはあふれんばかりの苺がのったタルトであった。
「あっ……」
タルトの上にはクッキーのプレートが乗っており、そこにはチョコで「心から祝福を」と書かれてあった。
──心から祝福を──
なんともリヴァイらしい祝いの言葉だ。
「へ、兵長……もしかしてこれが…」
「勘のいいやつだな。これがもう1つのプレゼントだ。喜んではもらえたか?」
リヴァイのプレゼント。
それは上質な苺を栽培している農家に連れていき、畑いっぱいの苺と、テーブルいっぱいの苺のデザートを食べさせるというものだった。
“好きなもの、気持ちを込めて”
ペトラからはそう教えて貰っていたが、クレアが好きなものといえば、ハンジ、モブリット、フレイア、デイジー、訓練といった所だろう。
装飾品の類にも興味のない奇行種クレアの好きなもの。必死に考えて思い出したのが“ベリーのタルト”だったのだ。
そこに焦点を絞り用意したプレゼントであったが、当の本人は喜んでくれたであろうか。
リヴァイは平静を装いながらクレアの瞳を見つめ、その返事をじっと待った。