第7章 調査兵団とハンジ班と時々リヴァイ
「お前の方が早くここにくるんだ。カギがなければ入れないだろう。それとも、毎晩俺の自室まで取りに来る方がいいのか?」
また…なんてことを言ってくれるんだ…
「い!いいえ!とんでもございません!ではそのようにさせて頂きます!」
「そうか……わかった…」
「ところで、お前は掃除が好きなのか?」
「………?!」
リヴァイに背中を向けて出て行こうとしたところに、予想していなかった質問をされた。
「好き…というわけではないのですが…父親が医者で、よく診療所の手伝いをさせられてましたので、掃除はよくやっていました。」
クレアはリヴァイに背を向けたまま答えた。
「そうか…」
…そういうことか…悪くねぇな。
「では、失礼いたしま…」
「おい…まだ話は終わってねぇ。」
そんなに早く出ていきたいのか、とでも言いたげな顔で、リヴァイは椅子から立ち上がるとクレアの背後に立った。
まだ…何を聞かれるのだろうか…
クレアは身構えた。
「この匂いは…花の香りか…?」
リヴァイはクレアの艶のある蜂蜜色の長い髪の毛を少し束に取ると、香りにつられて思わず口元までよせてしまった。
まさかの行為にクレアは驚き、力いっぱいまわれ右をしてしまう。リヴァイの手から蜂蜜色の髪はシュッと離れ、かわりにクレアの驚いた顔が、飛び込んできた。
思わず2人とも黙ったまま見つめ合ってしまう。
「こ、これはキンモクセイの花の香りです。お、お嫌いでしたでしょうか……?」
「…いや、そうではない。呼び止めて悪かったな…」
バツが悪そうに、机に戻ると、無言で執務を再開した。
「失礼しました……」
敬礼をして、クレアは執務室を出る。
部屋の外からはパタパタと走っていく音が聞こえた。
「………」
まただ……
あいつを前にすると、何故だが調子が狂う。
それに、あの花の香り、キンモクセイと言ったな…別に嫌いではない。嫌いではないが、妙な気分にさせられる。急かされるような、チクリとくるような、今まで経験したことのない感覚だ。
その香りはクレアが出ていった後もほんの微かに香っている。
リヴァイは大きく溜め息をつきながら、朝食前の執務を片付けていった。