第34章 その数、無制限
ダイニングルームに着くと、すでにセッティングは完了していて、後は2人が来るのを待っているかの様だった。そして、テーブルの中央にはクレアが摘んできたフリージアの花束が豪華に生けてある。
「女将さん!飾ってくださったんですね!ありがとうございます!」
「ちょうどテーブルを飾る花が欲しかった所なので嬉しいお土産でしたよ。こちらこそありがとうございました。」
2人が着席すると、心待ちにしていた女将は濃い赤色の瓶を持ってきて、セットされていたグラスに注いだ。
「我が宿自慢の苺酒でございます。」
キレイな細工が施された美しいグラスに澄んだ赤い苺酒が注がれていく。
その瞬間にフワッと香る甘酸っぱい香り。
その香りだけで十分に美味しいと想像できる。
「あまり飲みすぎるなよ。」
「わ、わかってます…」
毎度の事であるが、リヴァイが釘をさした。
運ばれてきた料理はどれもこの村で育てて収穫したばかりの新鮮な野菜たちが使われていた。
そしてメインディッシュに出てきた鴨肉は今朝方猟師がリヴァイ達のために仕留めてきたばかりのものだと言うではないか。
ニコニコと説明しながら料理を出す女将に、クレアはあまりにも至れり尽くせりなもてなしにだいぶ恐縮した様だったが、どれを食べても美味しかったため料理を口に運ぶ手が止まることはなかった。
「はぁ…もう幸せです…」
メインディッシュを食べ終わる頃には目をトロンとさせ満腹と言った表情を見せていたクレアであったが…
「その様子じゃ、もう腹いっぱいか?」
「はい…とっても美味しかったです……」
「そうか…それは残念だったな。」
「え?!」
満腹で満足していたクレアに、リヴァイは実にわざとらしいため息をつくと、いきなり残念だと言い出した。いったいどういう意味なのだ?
──ガラガラガラ──
「えっ?!えーーー?!」
ガラガラと運ばれてきたカートには大小様々な皿や器に盛り付けられたデザートが乗っていた。
どれもイチゴに生クリームをふんだんに使った贅沢なものばかりだ。
「腹いっぱいなら仕方ないな。どうする?下げてもらうか?」
リヴァイは頬杖をつきながら不敵に笑ってみせた。