第34章 その数、無制限
宿屋に戻ると、笑顔で出迎えた女将が2人の姿をみてキョトンとなり、次の瞬間には目を見開いて大慌てで薬箱を取りに奥の方に走って行ってしまった。
まぁ、無理もないだろう。
花畑を散策に行った2人が戻ってきたと思ったら、リヴァイは膝から下を靴ごとびしょ濡れにして、クレアを抱えている。
クレアはクレアでフリージアの花束を抱えながらも、その足からは血を滲ませたハンカチが巻かれていて、ポタポタと赤い雫を滴らせていたのだ。
誰が見たって慌てるだろう。
リヴァイは部屋まで運びソファに座らせると、すぐに慌てた女将が薬箱をもってやってきた。
「すまない女将、川に入ったら石で切ったようだ。」
「左様でございましたか…すぐに応急処置をさせていただきますね。」
「ご、ご迷惑おかけしてすみません……」
「そんな!とんでもございません!」
自分で処置できなくはないが、足の裏という場所なだけあって自身ではやりずらい。
縫う程の傷ではなかった為、クレアは仕方なくここは女将に任せることにした。
幸いしばらく圧迫をしていたら徐々に血は止まってきた。消毒と塗り薬を塗ってもらえば、包帯で仕上げをし、処置は完了だ。
「ありがとうございました。」
「縫う傷でなくてようございました。そろそろお食事の準備も出来上がりますので、落ち着かれましたらダイニングルームまでお越し下さいませ。」
女将はニッコリと笑顔を向けると薬箱を持って部屋を出ていった。
「あ、あの…兵長。色々とすみませんでした。靴も濡れてしまいましたし…それに……」
クレアは怪我をした事を詫ているのだろう。
さっきまであんなに楽しそうに輝いていた瞳が、薄暗く曇ってしまっている。
リヴァイはズボンと靴下を替えて、濡れた物たちをバルコニーに出した。
きっと明日には乾くだろう。
そして、部屋に備え付けられていたスリッパに履き替えると、クレアの足元に立て膝を付き手を添える。
「痛むか…?」
リヴァイは膝にクレアの左足を乗せると包帯が巻かれた患部に口付けをした。