第34章 その数、無制限
水を放った当の本人はよっぽどリヴァイと水遊びをしたかったのか太陽の元で眩しいくらいの笑顔を見せていた。
こんなに無邪気にはしゃぐ姿、おそらくハンジですら見た事はないだろう。
そう思うと優越感の様な感情がリヴァイを支配した。
しかし、そんな事はお構いなしにクレアは2度、3度とリヴァイに水をかけてきた。
スカートの裾が少し濡れてしまってるが、そんな事には気づいてないようだ。
蒼い瞳は宝石の様に輝き、何度も口付けをしてきた愛しい唇は何度も自分の名を呼んでいる。
そんな姿にリヴァイは無意識に……そう、クレアに吸い寄せられるかの様に自身の足は川に向かって動き出す。靴を脱ぐことも忘れ、只々この眩しい笑顔を抱きしめようとするために。
だが、リヴァイの靴の先が川の水に少し入った時だった。
「あっ……痛っ!!」
一瞬にしてクレアの笑顔が苦痛に歪む。
「おい!!どうした?!」
ただならぬ雰囲気を察して靴のままクレアのもとにバシャバシャと駆け寄ると、クレアは片手をリヴァイの肩に置き、左足を水から上げた。
「なんか急に痛くなって……」
上げられた左足からはポタポタと鮮血が流れでて、川の水を赤く染めていた。
「大丈夫か?おそらく尖った石を踏んだんだろう……」
リヴァイはひとまずクレアを抱き上げ川岸に座らせてから、改めて足の裏を見てみた。
「少し深いな…」
親指の付け根あたりを深く切ったみたいで、すぐに血は止まりそうになかった。
「取り敢えず宿屋に戻るぞ。」
「ご、ごめんなさい……私が子供みたいな遊びをしたせいで……」
「お前が気にするな。俺は俺で結構楽しんでいたから安心しろ。」
そう言うと、リヴァイはポケットからハンカチを出し患部をキツく縛ると、クレアとクレアの靴を抱えて宿屋まで戻ることにした。