第34章 その数、無制限
そんな事を考えていたら、サラサラと水の流れる音が聞こえくる。
「あっ、兵長!川ですよ!」
「あぁ、女将が言っていたのは多分この川の事だろう。もう少し歩けば花畑には着きそうだな。」
「はい!!」
しばらく歩くと目的の場所に到着した様だ。
クレアがリヴァイの手を一旦離すと、満面の笑みで走り出した。
「兵長ーー!!見てください!女将さんの仰っていた通り、満開です。」
走り出して行ったクレアが振り向きリヴァイを呼ぶと、そこには見事に満開のフリージアの花畑が目に飛び込んで来た。
「……確かに、すげぇな。」
それは花に興味のない男のリヴァイが見ても圧巻する程だった。
辺り一面に広がるフリージアの花はほとんどが黄色で、所々白いフリージアも混じっていた。
そのバランスも絶妙で、とても自然に咲いたとは思えない美しさだった。
「兵長、摘んで行って、女将さんへのお土産にしましょう!!」
そう言うと、クレアは楽しそうに花を摘みを始めた。
珍しく鼻歌なんか歌いながら。
リヴァイは近くの木陰に腰掛けながら花を摘むクレアを黙って見ていた。美味しそうに苺を食べ、楽しそうに花を摘む。調査兵でない街娘ならばそんな事、いつでもできることなのかもしれない。
しかしクレアは兵士である以上休暇が終わればまた命をかけた訓練と壁外調査に身を投じなければならないのだ。
「……………………」
そう思えば思うほど、リヴァイは今のクレアの笑顔がどうしても儚いものに感じずにはいられなかった。
「兵長見てください!こんなにたくさん摘めました。」
しばらくすると、金色の花畑から両手いっぱいのフリージアを抱えてクレアは戻ってきた。
「たくさん摘んだな。あの小さな宿屋にこんなにたくさん生ける場所あったか?」
「へへへ、それもそうですね!!でもせっかく摘んだのでバケツとかデキャンタとかも出してもらって、生けてもらいましょう!!」
クレアはやってしまったとばかりに照れ笑いをしている。
例えどんなに儚い笑顔であっても、それはリヴァイにとって大切な笑顔であることには変わりなかった。