第34章 その数、無制限
調査兵団に対して悪い印象を持つ人間が多い中、歓迎してもらえるのは嬉しいことだ。
夕飯の時間をつげて、部屋を出ていこうとしたオーナーと入れ違いに、オーナーの妻、女将がちょうど紅茶を淹れて入ってきた。
「長旅お疲れ様でした。村長から聞いております。苺畑は楽しんで頂けましたでしょうか?」
「は、はい!!とってもおいしかったです!あんなに美味しい苺を食べたの初めてで…本当にご馳走さまでした…」
「それはありがとうございます。あの苺畑はこの村1番の自慢でございますので、ご満足頂けて光栄にございます。」
リヴァイだけではなく自分にも深々と頭を下げられてしまい、クレアは思わず恐縮してしまった。
「この村は、しがない農村地帯なので、特に集客できるものはございませんが、もう少し東に行った所にキレイな川辺とフリージアの花畑がございます。ちょうど満開ですので、宜しければ散策に出られてはいかがでしょうか。」
ニコリと案内されると、女将は部屋をでていった。
「………………」
花畑か……
花など男の俺にとってはさして興味は無いが、観光名所ではない田舎村ではキレイな自然を散策するくらいしか売りはないだろう。
俺はクレアが好んで使っているキンモクセイの花くらいにしか興味はないが、花畑なら文句なしにクレアは喜ぶはずだ。
「飲み終わったら行ってみるか?花畑。」
「はい!フリージアが満開なんて素敵ですね!何色のフリージアが咲いているのでしょうか?楽しみです。」
予想通りの反応だった。
2人は夕飯までに戻ることを伝えると、早速宿屋をでてまずはダスゲニーのいる厩舎まで歩き始めた。
「ねぇ、ダスゲニー。少し歩いた所にフリージアのお花畑があるみたいなんだけど、一緒に行ってみない?」
クレアは一緒に行く気満々で誘ったのだが、当のダスゲニー本人は馬房の中でクルリと半回転すると、クレアとリヴァイに尻を向けて尾を上下に振り出した。
この様子は恐らく行くつもりはないのだろう。
「ダスゲニー?行かないの?」
ちょっと寂しげな表情を見せたクレアだったが、リヴァイは空気を読んだダスゲニーを心の中で褒めてやった。
「2人きりで行ってこいって言ってるんだよ。まったくこいつは気の利く野郎だな。」