第34章 その数、無制限
「え?!」
逃げられない様に肩に手をまわせばその唇はすんなりと重なった。
「んん……」
唇を重ねながらその味を堪能すれば、自然と2人の唾液が混ざり、なんとも言えない甘さの苺ジュースとなって喉元を通り抜けていく。
「……悪くないな…」
「へ、兵長……?!」
不意打ちのキスにクレアの顔はまさに苺の様に真っ赤だった。
リヴァイはクレアの口の端からこぼれてしまった苺の雫をペロリと舐めると、そろそろ切り上げようとクレアの手を取る。
「苺の食べ放題も悪くなかったな。もういいだろ?とりあえず宿まで荷物を起きに行くぞ。」
しかし、クレアは首を縦には振らなかった。
「兵長…お願いです!!もう少しだけ食べたいです。」
「あ?!」
「お、お願いです…こんな美味しい苺達、まだ名残惜しいです…」
まだ食うのかとゾッとしたが、今日はクレアの誕生日なのだ。リヴァイは駄目と言えるはずもなかった。
「仕方ねぇな。食いすぎて吐くなよ。」
それを聞いたクレアは満面の笑みで再び苺を頬張りだした。
その後リヴァイは、何度か宿まで連れて行こうとしたが、テコでも動かず、結局クレアが食べる手を止めたのはそれから1時間後の事だった。
「……兵長…もう動けません……」
クレアは苺畑の中で尻をついて只々一点を見つめていた。
そんな姿にため息をつきながらリヴァイがクレアの両腕を引っ張り上げる。
「だからほどほどにしとけと言ったんだ。ほら、吐くんじゃねぇぞ。」
「吐くなんて!そんなもったいない事絶対にしません!はぁ……夢の様な時間でした…」
「いったい何個食ったんだ。この奇行種が……」
呆れ顔だったリヴァイもこの満足そうな顔を見てしまえば、自然と口元が緩んでしまう。
若干足元がフラフラとしているクレアの腕を抱えて2人は苺畑を後にした。