第34章 その数、無制限
「そ、その節は本当にご馳走さまでした…」
恋人同士でもなかったのにあんなに遠慮なくおかわりをした自分がなんだか急に恥ずかしくなってしまった。
「最初は調理場の職員に上質な苺の仕入先に知り合いがいないか聞いたんだ。そしたら運良くいてな。街の商店の店主を紹介されて話をしたらここを教えて貰えたんだ。」
「そんなに色々と調べて下さったんですね……」
自分の知らない間にそんな手間をかけさせていたとは…
こんな話を聞かされてしまえば、思わずクレアは自分の目の前に可愛く実っている苺の一つ一つが途端に愛おしく感じてしまった。
リヴァイの想いを乗せて赤く実らせている可愛い苺達。
そうなれば、1つも残さず食べたいと思ってしまい、クレアは再び苺を次々に口へ運んでいった。
「おい奇行種…まだ食うのかよ…」
「はいもちろんです!朝ごはんも食べてきてませんし、まだまだ入ります。それに兵長が用意してくださったこんな素敵なプレゼント、残したくありません。」
……待て。今こいつは何て言った?
俺は確かに食べ放題だとは言ったが、このハウスの苺全部がプレゼントだとは言っていない。しかもこんなに広いハウスの苺畑。当たり前だが1人の人間で食える量ではない。クレアはいったい何を考えているんだ。
「待て待て……どう考えたってこの量を全部食うのは無理だろ。」
「えぇ?意地でも食べたかったのですが……」
「はぁ……バカ言うな。そもそも村長だって、食べ放題の権利を売ったとはいえ、全部食われる事など想定していない。仮にお前が、全部食っちまったらどうなる?予定していた収益が上げられずに村人が泣くぞ。」
「う…そ、それは確かに申し訳ないです……」
「分かったなら程々にしておけ、これはまだ1つ目のプレゼントだ。」
「ま、まだあるんですか?もう十分すぎるくらい頂いたのですが……」
「俺を誰だと思ってる。まだ度肝をぬくプレゼントを用意してるから覚悟しとけよ。」
リヴァイは不敵な笑みをこぼしながらクレアが甘いと言っていた小ぶりの苺を1つ咥えると、その唇をそっとクレアに近づけた。