第34章 その数、無制限
「おい、食べ放題だとは言ったが…腹壊すなよ。」
クレアの足元にはもいだ苺のヘタが山の様に積もっていた。いったいいくつ食べたのかは不明だ。
「だ、大丈夫です!こんな機会滅多に…というかもう二度とないかもしれないじゃないですか!!後悔のない様食べておきたいです!!」
「………」
──二度とないかもしれない──
クレアはきっと深く考えず何気なく言ったのだろう。
今言った言葉の通り、壁外調査を伴う調査兵にとって“次”また同じ事ができる日常の保証などどこにもない。
クレアも知らず知らずの間にその残酷な現実が身体に染み込んでしまったのだろう。
無自覚に出た調査兵らしすぎる言葉に、リヴァイの胸はチクリと痛んだ。
「ハッ、奇行種らしくない発言だな。また連れてきてやるから安心しろ。まぁその前に、あのクソメガネが連休の申請を受理しなけりゃ難しくなるけどな。」
「そしたらまたテキーラ勝負ですか?」
「はぁ…あれはもう正直勘弁だ…もともとテキーラはあんなにガブガブと飲む酒じゃねぇんだ。」
「そうですよね……でもこんな素敵な所、兵長よくご存知でしたね?ハンジさんには申し訳ないのですが、こんなプレゼントを頂けて、私は感激しております。」
「……知っていた訳ではない。」
「え?」
「お前が喜びそうなものはないか、考えて考えて、調べたんだ…」
クレアはリヴァイの言葉に少し驚くと、口に運ぼうとしていた苺を思わず止めてしまった。
「実はお前へのプレゼント、なかなかいい案が浮かばなくてな。正直焦った。でもお前と初めて食事に行ったときの事をふと思い出したんだ。」
「食事って昨年の秋のことですか?」
「あぁ、あの時お前が言っていた事を思い出したんだ。“ベリーののったタルトが大好物”だってな。それで上質な苺が食える場所を調べまくったらこの村を紹介されたんだ。」
「そんなこと、覚えててくださったんですね……」
「当たり前だろ、たらふく食った後に2回も追加注文されれば忘れたくても無理な話だな。」
リヴァイ少し意地悪な笑みをこぼしクレアの頬を軽くつまんでみせた。