第34章 その数、無制限
走り出して暫く過ぎた。
まだ村の様な風景は見えてこなかったが、リヴァイはダスゲニーを一旦止めると、ポケットから大きめのハンカチを出し、後ろから突然目隠しをし始めた。
「え?兵長?これはいったい何ですか?」
突然視界が真っ暗になり、当然だがクレアは戸惑った。
「もう少ししたら目的地に着く。先に見えてしまったら驚きに欠けるからな。しばらく我慢しろ。」
「そ、そんなぁ…」
そう告げると、後頭部の辺りでキュッとハンカチを縛り、再びダスゲニーを走らせた。
もうクレアには何がなんだか分からなかった。
目隠しをされて30分はたっただろうか。
注意深く耳を済ませるとなんとなく人々の生活している雰囲気が聞こえてくる。
目的の村には着いたのだろうか。
「あの、リヴァイ兵長でございますね。私は村長のラルス・ハーゲンと申します。ご連絡は頂いておりました。この度はこんな田舎の村にお越しくださり…誠にありがとうございます!」
少し先から誰かが走ってくる音がしたと思ったら年配だろうと思われる男がリヴァイに声をかけてきた。
「村長、急な申し出で悪かった。内容は手紙に書いておいた通りだが、用意はできているか?」
「はい!勿論でございます。ご案内致しますのでこちらへどうぞ。」
「リヴァイ様、馬とお荷物はこちらでお預かり致します。」
今度は年配風の女の声だ。
村長の妻…といったところだろうか。
「あぁ…頼んだ。出発してから休憩無しできたからすぐに水を飲ませてやってくれ。」
「かしこまりました。」
リヴァイは先に降り、クレアの手を取り抱えるとそのまま横抱きにしてしまった。
「え?兵長?お、降ろして下さい!は、恥ずかしいです!」
「駄目だ、転んだらどうする。」
「で、では転ばない様に目隠しを取って下さい」
「それはまだ駄目だ。」
「う……うぅ……」
今は何を言っても無駄なようだ。