第34章 その数、無制限
「よし、行くぞ。ちゃんと掴まっとけ。」
するとリヴァイはクレアの後ろに跨り手綱を短く持ち直した。
「きゃっ!兵長!やっぱり私後ろの方がよくありませんか……?」
自身が後ろに乗ってリヴァイの腹に両腕をまわすのも照れ臭いが、後ろに乗られてすっぽりと包まれてしまうのもそれはそれで心臓がうるさくなってしまう。
「なんだよ、文句あるのか?ダスゲニーはでかい分走った時の反動もでかいぞ。お前の分の鐙(あぶみ)はないし、後ろだと確実に振り落とされる。ほら、ここに掴まっとけ。」
「あ、これは…」
確かにダスゲニーは大きい分走った時の反動も大きいだろう。後ろからしがみついててもバランスを崩したら落馬しかねない。そしてよく見ると、鞍の前方部分にはバッグの持ち手のような後付のベルトが装着されてあった。
「兵長、サドルホルダーなんてよく調査兵団の倉庫にありましたね?」
このサドルホルダーというベルトは馬術初心者の訓練や、両手を離して乗る訓練の時の補助として使われる事が多い。
もちろん兵士達は馬に乗れる状態で入団してくるため、調査兵団にこんな物があったなんてクレアは驚きだった。
「あぁ?ここは訓練兵団じゃねぇんだ。こんな物、こんな所にあるわけないだろ。」
「え?ではどこで?」
「俺が街の馬具屋で買ってきたんだ。」
「そ、そうなんですか……??」
そもそも何故リヴァイはこんな物を買ってまで馬1頭で行くことにこだわるのか?
クレアとて訓練を積んでる調査兵だ。私服であろうと長距離の馬移動などわけない。
「あ、あの…わざわざサドルホルダーまで購入されるなんて…何故ダスゲニーだけで行くんですか?」
するとリヴァイは盛大に舌打ちをしながらクレアを後ろから抱きしめると、右耳に唇を寄せ囁いた。
「なんだよ……せっかくの2人きりの休暇がとれたというのに、片時も側から離れたくないと思ったのは俺だけか?それは残念だ…」
「へ?!」
まさかの言葉にクレアの身体はピクッと反応してしまう。