第32章 譲らぬリヴァイ!譲らぬハンジ!デスマッチ!
「…………チッ!」
クレアの前で記憶を失くしたこともありえなかったが、この心地良い膝枕の状況を覚えていないという大失態をしでかした自分にリヴァイは盛大な舌打ちをした。
身体を起こせば上半身は裸だ。下半身はベルトまでしっかり付けているあたり、なりふり構わずヤッてしまった…というわけではなさそうだ。
ぐるりと部屋を見渡せば床に脱ぎ捨てられた服、ソファのテーブルには水差しとグラス。
なんとなくボンヤリと思い出しそうだったが、手っ取り早くこの状況を知りたかったリヴァイは諦めてクレアから聞くことにした。
「あぁ……この部屋に入ったあたりから記憶がねぇ。短的に教えろ……言っとくが、嘘はつくなよ…」
「は、はい……」
クレアは仕方なく昨夜の事を全てリヴァイに話した。
「なんだ…それは……」
クレアの話が本当だとすると、俺はフラフラになって水をカブ飲みした挙げ句、溢して濡らして、抱こうとしたところで完全に意識を飛ばしたという事になる。
しかもこの膝の上で……
何という醜態だ……
「それじゃあお前は、寝てねぇのか?」
「い、いえ。枕を上手く使って少しは眠りました。なので、訓練は問題なくやれます。」
「少しは寝たんだな……?」
「は、はい……」
何故リヴァイは2度聞いたのだ?
疑問に思っているクレアをよそにリヴァイはニヤリと悪い笑みをこぼすととんでもない事を言い放った。
「昨夜はとんだ失態を見せて悪かった。悪いが今すぐ忘れてくれ。」
「ええ?!そ、そんな事急に言われても…無理ですよ…」
本人を前にして言えるわけなどないが、自分の膝の上で気持ちよさそうに眠るリヴァイも、美少年のように美しいと感じたリヴァイも自分だけのものだ。
酒に強いリヴァイの事だ。おそらくこんな事は二度とないだろう。
クレアはいくらリヴァイの命令でもそれは聞き入れることができなかった。