第32章 譲らぬリヴァイ!譲らぬハンジ!デスマッチ!
──翌朝──
先に目を覚ましたのはクレアだった。
「ん……起きなきゃ……」
変な姿勢で眠ったせいか、身体が若干痛い。
しかし、一睡もしないよりかは幾分マシだっただろう。
時計を見れば5時をまわっていた。
4時間は眠れたみたいだ。
ゆっくりと身体を起こすと、リヴァイは寝返りもせずぐっすりと眠ったままだった。
表情は穏やかで、目元の赤みも引いているあたり2日酔いなどの心配はなさそうだ。
もう少し寝かせておいてやりたいが、昨夜のバトルのせいで仕事が滞ってしまっただろうし、起きたらシャワーも浴びたいだろう。
クレアはリヴァイの黒髪に触れて、声をかけてみた。
「リヴァイ兵長……朝ですよ?」
「…!!!」
クレアは耳元で囁くように声をかけたつもりだったのだが、リヴァイはグワッと殺気を漲らせたかのような勢いで目を開いた。
「ヒッ!!」
いきなり目を見開いたリヴァイに、クレアは小さな悲鳴を上げてしまった。あんなに気持ちよさそうに眠っていた美少年のリヴァイが、クレアのかけた一言により一瞬でいつものリヴァイに戻ってしまった。
心なしか名残惜しさを感じてしまうのは致し方ないだろう。
「「……………」」
しばし無言で見つめ合う2人だが、先に口を開いたのはリヴァイだった。
「おい…これはいったいどういう状況だ…」
「ど、どういう状況だと聞かれましても……兵長は覚えてらっしゃらないんですか?」
“覚えて”ないのか……だと?!
リヴァイは眉間にシワを寄せながら昨夜の事を思い返してみた。
「…………………………」
昨夜はクソメガネのクソみてぇな勝負事に巻き込まれて、クソみてぇな量のテキーラを飲まされた。
なんとか勝負には勝ったが、その辺りから記憶が朧気だ。エルヴィンと何かやり取りしたあとクレアを自室まで引っ張りこんだ所までは覚えているが、扉を閉めたとこからこの膝枕の状況まで記憶がない。